「パーソナリティ障害」について詳しい方は、多くないはずです。パーソナリティ障害の文言から、パーソナリティ障害はパーソナリティの障害、つまり、性格破綻者だと短絡的に判断されることがあります。そこから、性格破綻で性格が悪く、回復が難しいと見る向きもありますが、パ-ソナリティ障害は性格だけの問題ではありません。発症する複雑な背景もあるのです。今回はパーソナリティ障害のアウトラインについて解説します。
1.パーソナリティ障害とは
パーソナリティ障害の典型的な特徴は、認知・行動特性が著しく偏っていることです。パーソナリティ障害の本人が重大な苦痛と感じていることもあります。その偏りは、一般的な人たちの平均値に比べて程度の差が大きく、大きなひらきがあると理解されているのです。そこから、パーソナリティ障害は本人特有の性格の問題として捉えなければ、十分に改善する余地があるでしょう。なお、2013年の米国精神医学会が出したパーソナリティ障害の診断基準では、パーソナリティ障害は「パーソナリティ機能の減損」であると定義されています。機能が減損した状態にあるので、改善する方法はあり得ます。
2.パーソナリティ障害の種類ついて
米国精神医学会の統計マニュアルによれば、10 種類のパーソナリティ障害が存在し、大別すると3つのグループに分けられます。
2-1.3グループの分類表
グループ |
特 徴 |
症 状 |
Aグループ |
妄想性 |
不信と猜疑心、自身を正当化 |
シゾイド |
他者に対する無関心、社会との関わりの希薄さ |
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統合失調型 |
奇妙または風変わりな思考と行動、現実離れ |
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Bグループ |
反社会性 |
社会的無責任、倫理感や道徳観が希薄、欺瞞、他人の軽視、自分の利益を得るための他人の操作 |
境界性 |
一人でいることの問題、感情や衝動的行動のコントロール問題、周囲への依存傾向が大 |
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演技性 |
人の注意を引きたい欲求と劇的な行動、悲劇の主人公 |
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自己愛性 |
もろい自尊心、賞賛されるべき必要性、自分の価値について過大評価、自己誇示が大 |
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Cグループ |
回避性 |
拒絶される恐れによる対人接触の回避 |
依存性 |
服従と依存(世話をしてもらう必要性による)、人任せ |
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強迫性 |
完全主義、柔軟性のなさ、頑固さ |
Aグループは、風変わりな考え方や行動が特徴です。「かなり変わっている」と思われている人も、多くみられるパーソナリティ障害で、統合失調症に似た傾向が見られることもあります。本人に問題意識のない方が多いのも、Aグループの特徴です。
Bグループは、感情の起伏が激しく、不安定なタイプです。自分に対するイメージや気持ちも不安定で、移り気な性格と言えます。過激な行動を起こすこともあり、周囲の人が巻き込まれやすいパーソナリティ障害です。
Cグループは、不安定感の強いタイプが特徴です。それぞれの際立った特徴をもつパーソナリティ障害が含まれ、分類が不可能なパーソナリティ障害もCグループに含まれます。日本人に多いタイプといわれています。
3.パーソナリティ障害の要因
パーソナリティ障害を発症させる要因は多数あります。また、それらが相互に複雑に影響し合っているケースもあり、パーソナリティ障害の原因を特定の1つに絞り込むことは不可能です。以下でパーソナリティ障害発症の主要な要因といわれる3種類をご紹介します。
3-1.生まれ持った要因
パーソナリティ障害は、遺伝子と環境の相互作用によって発症しやすいといわれています。一部の人はパーソナリティ障害になりやすい遺伝的な体質を生まれつき持っていて、その傾向が成長過程の環境的な要因で、抑えられたり、強められたりするようです。
3-2.脳の発達障害
パーソナリティ障害の要因として、脳が成長する過程で生じる「脳の発達障害」が関係するケースもあります。脳の発達障害全てが、ストレートにパーソナリティ障害に結びつくわけではありません。それでも幼少期にADHD(注意欠陥多動性障害)や、学習障害(LD)などの症状がありながら、適切な治療を怠った方が、成長してパーソナリティ障害と診断される割合が比較的高いことも判明しています。
3-3.社会状況・時代背景
親の子どもの育て方や、子どもが自分と社会をどのように考えるかは、社会状況が影響する場合も少なからずあります。現代社会は競争や自由が重要視され、道徳や社会ルールが重んじられない傾向です。これらもパーソナリティ障害に、直接・間接的に関与していると考えられています。
4.パーソナリティ障害の治療方法
パーソナリティ障害の治療方法は、個人精神療法・集団療法などの精神療法があるのです。あくまで本人が治療を求め、治癒したいという意欲がある場合は、効果が高くなる傾向も見られます。抑うつや、不安などの苦痛の症状を和らげるケースと、攻撃性などのパーソナリティ特性を一時的にコントロールする場合は投薬が役立つこともあります。しかし、薬でパーソナリティ障害を完治することは、極めて困難です。
5.まとめ
パーソナリティ障害では、発症しながら自覚していない患者もいらっしゃいます。しかし、症状に気付いている患者本人は、大いに悩み、日常生活でもたいへんな思いをすることがあるのです。また、パーソナリティ障害の患者を取り巻く家族や知人、友人に迷惑がかかる場合もあります。治らない病気ではありません。治療を受けましょう。
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